大阪湾海岸生物研究会のブログ

大阪湾海岸生物研究会の活動(定点調査や勉強会)の案内や記録のほか、大阪湾を中心とする海の生き物について書きます。

戎崎のカイメン類

同定に時間がかかったのでUPが遅くなりましたが、6月6日に戎崎でみつかったカイメンをご紹介します。
今回取り上げるのは3種です。
1.ユズダマカイメン(Tethya aurantia
丸い形のカイメンです(下写真)。これまで丸い形のカイメンはトウナスモドキを紹介したことがありますが、今回見つかったのはそれとは違っていました。現場写真では写っていませんでしたが、持ち帰って角度を変えてみると頂端に丸く出水孔が空いていました(スケール入り写真参照)。カイメンの大きさは直径が1.5cmくらいです。ユズダマカイメンはこれまでも観察会で名前が上がっていましたが、持ち帰って確認したのは初めてです。


同定には骨片の種類と配列を見る必要があります。この種の特徴は表層から内層まで針状体の束が放射状に並ぶこと、表層(Ectosome)の厚みが500〜1000㎛ほどあってその最外層に棍棒星体(Tylaster)が密に並ぶこと、球星体(Eulaster)がまばらに表層と内層に分布することなどです(写真1)。また、芽球と呼ばれる組織もみられます。上のスケール入り写真で体からわずかに飛び出しているのがそれです。

2.Haliclona permollisimilis 和名なし
紫色をしたカイメンでムラサキカイメンとよく似ています。両種の違いは、このカイメンの表面状態はムラサキカイメンに比べて滑らかさに欠けるということでしょうか。固さもムラサキカイメンより柔らかな感じです。
この種は、瀬戸内海ではごく普通に見られるカイメンである(Hoshino,1981)とされていますが、あまり記録が見当たらないことをみると案外ムラサキカイメンと間違われていることが多いのかもしれません。

骨片の種類はムラサキカイメンと同様に桿状体のみですが(下写真)、骨片配列は違っています。ムラサキカイメンの骨片配列は、各骨片の先端がわずかなカイメン質繊維で繋がる網目状構造(写真2)になるだけですが、この種はそのほかに骨片の束が基層から表層にかけて走る別の配列も持っています(写真1 矢印)。


3.マルイボカリナ(Callyspongia sphaericuslobata
不規則な半円形突出部を持つ不規則塊状のカイメンです。丸い出水孔が突出部の先端に開いています。触ると弾力があります。

前種と同じ単骨海綿目に属していて骨片の種類は桿状体ただ1種からなりますが、骨片が海綿質繊維で包まれて網状構造を作ることでまったく別のグループになります(写真1、2)。
骨片を含む海綿質繊維は縦横にやや規則的に配列します。縦方向の繊維には骨片が何列もの束になって含まれていますが、横方向の繊維はわずかに1〜2列くらいの骨片列を含むのみです(写真1)。表面には内層とは別の構造があり、海綿質繊維が網目状に走っています(写真2)。


OKKメールで報告したものの中から一部を紹介しました。(大谷)