大阪湾海岸生物研究会のブログ

大阪湾海岸生物研究会の活動(定点調査や勉強会)の案内や記録のほか、大阪湾を中心とする海の生き物について書きます。

豊国崎のコケムシとウミグモ

1.シメジヤワコケムシ Alcyonidium mamillatum
ケアシホンヤドカリが入った貝殻の表面全体を覆うコケムシです(写真1、2)。山下さんが採集してくれました。Alcyonidium属のコケムシには、指状に立ち上がった群体を作るものと、このように貝殻や他物表面を覆うものがあります。他物表面を覆うものの中で日本から知られる種にはA. nanumA. nipponicumA. shizuoiなどがありますが、本種は立ち上がった開口部を持つ(写真2、3)こと、黄褐色の色彩、20本前後の触手(写真4)を持つことなどでこれらから区別することが出来ます。また、立ち上がった開口部に輪環状の皺を刻む(写真3)ことも特徴のひとつです。触手の数については、新日本動物図鑑では16〜18本となっていますが、D’Hondt and Mawatari (1986)では16〜23本とされています。
国内での記録は少なく、厚岸湾や相模湾などがあるに過ぎません。
文献
D’Hondt, P. J. and S. F. Mawatari (1986) Les Alcyonidium (Bryozoa, Ctenostomida) des côtes du Japon. Bulletin du Muséum national d'histoire naturelle, 4e, Sér., 8: 457-469.



2.ズングリツマリウミグモ Anoplodactylus crassus先日、田倉崎から有山さんが報告したシマウミグモとは別のウミグモがみつかりましたので報告します。
このウミグモはBugula sp. というフサコケムシに似たコケムシに絡み付いて雌雄がみつかりました(写真1)。雌雄ともしっかりした鋏肢がありますが、担卵肢はオスだけにしかありません。また、接脚突起末端(写真2)と、第一基節先端(写真3)に剛毛を持った瘤状突起をひとつまたは2〜3持つ特徴があります。
この種の国内での記録は少なく、相模湾からのものがあるに過ぎません。海外では、韓国とサモアから知られています。
文献:
Nakamura, K. and C. A. Child (1988) Pycnogonida of the Western Pacific Islands V. A collection by the Kakuyo Maru from Samoa. Proceedings of the Biological Society of Washington, 101 (4): 809-816.

中村光一郎(1990)真鶴海岸のウミグモ類.横浜国立大学理科教育実習施設研究報告,(6): 19-33.(大谷)