大阪湾海岸生物研究会のブログ

大阪湾海岸生物研究会の活動(定点調査や勉強会)の案内や記録のほか、大阪湾を中心とする海の生き物について書きます。

豊国崎海岸(6/30)で採集されたウミウシ類2種

1. ラメリウミウシ属の一種 Onchidoris sp.(図1)
 匍匐性のコケムシ類を捕食するウミウシで,転石裏に3個体付着していました.写真だと少しわかりにくいのですが,背面全体に乳頭状の小突起を多数もつのが特徴です.同様の食性を示す種にナガヒゲイバラウミウシOkenia pillosaとヒメイバラウミウシOkenia planaがいるのですが,本種とは背面の突起および口部の形状で見分けることができます.
 歯舌は,中央歯を欠き,鎌状で先端部付近に多数の小歯をもつ第一側歯とその隣に痕跡的に残る第二側歯からなります(図2).ラメリウミウシ属は,口球の背面にポンプ状の器官をもっており,餌を吸引して摂食します.そのため,歯舌で餌を削り取って食べるタイプのウミウシより歯舌が小さく歯数も少ないようです.
 同属で形態の似た種に,北太平洋原産のOnchidoris depressaという種がいますが(http://www.seaslugforum.net/find/onchdepr),この種とは分布域や歯舌の形状が若干異なるので,今回見つかった種についてはとりあえず未定種としています.

図1. Onchidoris sp. の背面と腹面から見たようす

図2. Onchidoris sp.(2.5mm)の歯舌

2. トモエミノウミウシ Favorinus pacificus Baba, 1937(図3)
 こちらも,転石の裏から採集されたウミウシです.一般にミノウミウシ類は,ヒドロ虫など刺胞動物を食べる種が多いのですが,この仲間はウミウシの卵塊を食べる少し変わった食性を示します.本種の食性は知られていませんが,おそらく他の近縁種と同じく卵塊食ではないかと思います.
 食性と関係して,歯舌と顎板の形状もちょっと変わっていて,歯舌はナイフのように先が尖った形(図4),顎板は咀嚼突起という細かいギザギザが複数列あります(図5矢印).卵塊を食べるのに適した形状なのでしょうか.
両種はいずれも大阪府岸で初記録です.

図3. トモエミノウミウシの背面と腹面から見たようす

図4. トモエミノウミウシ(6.7mm)の歯舌

図5. トモエミノウミウシ(6.7mm)の顎板

(柏尾)