大阪湾海岸生物研究会のブログ

大阪湾海岸生物研究会の活動(定点調査や勉強会)の案内や記録のほか、大阪湾を中心とする海の生き物について書きます。

戎崎のクロガシラとドロソコエビ

昨日の戎崎の観察会、実施できてよかったですね(寒かったですけど)。当日採集された2種について紹介します。
現地のまとめで「クロガシラ類」と報告した海藻は、ヒジキの軸に付着していたもので、毛の束状の小型褐藻です(写真1)。実体顕微鏡で見るとY字型の胚芽枝があったので(写真2)、種名はワイジガタクロガシラ Sphacelaria rigidula だと思います。種の特徴や学名の変遷については以下のサイトをご参照ください。
http://natural-history.main.jp/Tree_of_life/Eukaryote/Chromalveolata/Phaeophyceae/Sphacelaria_rigidula/Sphacelaria_rigidula.html





















写真1(上). ワイジガタクロガシラ(矢印) 
写真2(下). 同 拡大写真(スケ−ル:0.1mm)








ヨコエビの1種、オオサカドロソコエビ Grandidierella osakaensis (写真3)は、淡水の流入のある潮間帯上・中部の転石下または転石側面の砂泥に巣を作って、かなり高密度に生息していました。ここに生息していることは、既に別のブログでも紹介されています。https://blogs.yahoo.co.jp/magokorogai/39388364.html
本種は、元々大阪府の河口域(淀川と岬町の2河川)の標本を基に記載された種ですが(Ariyama, 1996)、その後、島根県や、三浦半島伊豆大島伊豆半島でも見つかっています(Ariyama and Taru, 2017)。2月の総会でも発表したように、河口域だけでなく、淡水の流入さえあれば多様な環境に生息可能な種だと考えられます。なお、本会の観察会で普通に出現するアカヒゲドロソコエビ G. rubroantennata とは、(1)触角がオオサカは淡紅色であるのに対し、アカヒゲでは鮮紅色、(2)オス第1咬脚第5節の棘数がオオサカでは3本であるのに対し、アカヒゲは2本であることで識別できます。(有山)

写真3. オオサカドロソコエビ(オス、スケ−ル:1mm)