大阪湾海岸生物研究会のブログ

大阪湾海岸生物研究会の活動(定点調査や勉強会)の案内や記録のほか、大阪湾を中心とする海の生き物について書きます。

戎崎のカイメンとコケムシ

1.Pseudosuberites kunisakiensis Hoshino, 1981(和名なし)
あまり特徴のない、色彩も地味な薄っぺらなカイメンです。大きさは写真のようです。厚さは場所により2-5mmくらいでした。

骨片は片方の先端が球状に膨らみ、もう片方の先端が尖った瘤状体です。他の種類のものはありません。瘤状体には二種類あり、小さい方の大きさは145-225 (190.2±20.8µm)×4-8µm(長さ(平均値±標準偏差)×幅)、大きい方は228-315 (274.0±21.1µm)×5-10µmです。この大きさも種を決める要素です。
大きな骨片は主に内層にあり、小さなものは主に表層にあります。これらの骨片は表層では立ち上がることなく水平に配列しますが(写真2の左上拡大写真参照)、その並びは、表面から見ると不規則または網目状になっています(写真1)。内層ではやや不規則ですが束状になった骨片が基層から表層へ向かい、表層付近でやや扇状に開く構造を持ちます。骨片束の間には不規則に瘤状体骨片が配列します(写真2)。
瘤状体骨片を持つカイメンは、これまで田倉崎からSuberites属のヤマトトメバリカイメン(Suberites japonicus)が知られていますが、本種とは属レベルで違っています。両属の大きな違いは表層の骨格構造にあります。ヤマトトメバリカイメンが属するSuberites属では表層の瘤状体が垂直に立ち上がって柵のような構造に配列しますが、本属(Pseudosuberites属)ではすでに述べたように水平な配列となります(写真2参照)。
本種は大分県の国東半島で新種記載されましたが、その後は宇和島と韓国の済州島から記録されています(Sim et al. 1990)。


2.Microporella elegans Suwa and Mawatari, 1998(和名なし)
薄いピンク色をしたコケムシです。虫室口は半円形で腹壁に調整孔があります。このような特徴はウスコケムシ科(Microporellidae)に見られますが、虫室口と調整孔の間に孔がないことから標本はMicroporella属のコケムシであることがわかります。
本種の大きな特徴は調整孔に篩状構造を持つこと、虫室口の底辺にのこぎり状の刻みがあること、底辺両側に側歯があることです。これらの特徴の一つまたは二つを備える種は他にもありますが、三つ全部が揃った種はないとされています。ほかには調整孔の位置が虫室口に比較的近く配置すること、調整孔の側方に一つの鳥頭体があってそれがほぼ真横に向いていること、その顎には一対の突起があることなどの特徴があります。
本種は北海道の鮎川というところで新種記載されました(Suwa & Mawatari 1998)。それ以外には厚岸や伊豆の下田からの記録があるようです(Kaselowsky 2004)。(大谷)