大阪湾海岸生物研究会のブログ

大阪湾海岸生物研究会の活動(定点調査や勉強会)の案内や記録のほか、大阪湾を中心とする海の生き物について書きます。

長崎のモスソフクロボヤ

モスソフクロボヤ(Molgula hozawai
体全体が砂粒で覆われ、黒っぽく見えるホヤです(写真上)。それでも入水管と出水管は辛うじてみつけることが出来ます。どちらが入水管でどちらが出水管かは見た目ではよくわかりませんが、外皮を剥がしてみた結果、写真のように確認することができました。
外皮を剥がしたのは、同定のために筋膜体を取り出す必要があったからです。
ホヤの同定に必要な形質はいろいろありますが、生殖腺も重要な形質のひとつです。本種が属するフクロボヤ科のホヤの場合、この生殖腺が体のどちらにあるか、どの場所にあるかで属が決まります。
この標本のように生殖腺が体の左右にあること(右の生殖腺は示していません)、左の卵巣が第二腸環の中にある場合はMolgula属と同定されます(写真下)。
Molgula属の種の同定には小精嚢と卵巣の形や位置関係が大切です。本種の場合は、写真のように丸味を帯びた卵巣の後端に小精嚢が扇形に配列する特徴を持っています。本種の和名は、着物の裾(裳裾)を広げるように小精嚢が卵巣の下に広がることにちなんだのかもしれません。(大谷)