大阪湾海岸生物研究会のブログ

大阪湾海岸生物研究会の活動(定点調査や勉強会)の案内や記録のほか、大阪湾を中心とする海の生き物について書きます。

豊国崎でみつかったカイメンとヒモムシの紹介

豊国崎で2020年6月21日に見つかったカイメンとヒモムシについて紹介します。

海綿動物

石灰海綿綱

タテジマカイメン Heteropia striata

加戸さんが見つけてくれました。白っぽい色彩のカイメンで、いくつもの管が立ち上がりますが、それぞれの管の下端で互いに癒着して基物に付着しています。表層には縦に走る太い桿状体があって、縦縞模様に見えます。表層からは細い毛状のまっすぐな桿状体が飛び出していて、けば立った感じになります(右写真でかすかに見えます)。
骨片は長い柄の矢状三幅体と大小の桿状体からなります。

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全体像(左)と表面の拡大写真(右)(縦に走る桿状体が見える)
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桿状体(左)と矢状三幅体(右)

普通海綿綱

Haliclona takaharui (和名なし)
加戸さんが見つけてくれました。濃い紫色をした柔らかなカワナシカイメン属のカイメンです。表面には出水孔がランダムに配置しています。骨片で作られる骨格構造は、不明瞭ながら基層から表層に走る一次繊維があり、その一次繊維同士はランダムに配列した骨片で結ばれています。
骨片の種類は大小二種類の桿状体です。大きい方は130μmくらいの長さがあり、小さい方は110㎛くらいの長さがあります。

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全体像(左)と骨格構造(右)(縦に走る一次繊維が見える)
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大小二種類の桿状体(左写真が大桿状体、右写真中の細いのが小桿状体)

紐型動物
Evelineus mcintoshii(和名なし)
鮮やかな赤い筋が頭部から尾部まで背面の中央を走り、赤い筋の下に黒い横縞がほぼ定期的に配列するとてもきれいで特徴的な模様のヒモムシです。この色彩の他に頭部には朱色の横長の三角状の斑紋があり、その前に接して黒い斑紋があります。写真ではわかりませんが頭の両側縁には頭横溝という溝があって、二つ目の黒い横線のあたりまで走っています。このヒモムシははるか昔、1890年代に神奈川県の三崎から発見されましたが(高倉 1898)、その後国内での記録はほとんどありません。ただ、近年は世界各地で発見が相次いでいるようで、分布が汎世界的であることや発見場所が港の近くであることなどから外来種ではないかと考えている研究者もいます(例えばAlves et al. 2019)。大阪湾では海岸生物研究会のこれまでの長い活動の中でも発見されず、今回初めて発見されたことは貴重な記録といえるかもしれませんが、海外で言われているように近年分布するようになった可能性もあり、外来種も視野に入れながら今後の動向に注意する必要がありそうです。

参考文献

Alves R.V.A., Mendes C.B., Craveiro N. & Rosa Filho J.S. (2019) First record of the marine     nemertean Evelineus mcintoshii (Langerhans, 1880) (Heteronemertea, Lineidae) in     Northeastern Brazil. Pesquisa e Ensino em Ciências Exatas e da Natureza, 3(2): 147–153.

高倉卯三麿 (1898) 三崎近傍産紐虫(Nemertine)の分類.動物学雑誌,10: 184-187.

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全体像(左)と頭部(右)

 (大谷)