大阪湾海岸生物研究会のブログ

大阪湾海岸生物研究会の活動(定点調査や勉強会)の案内や記録のほか、大阪湾を中心とする海の生き物について書きます。

田倉崎定点調査(5月7日)のご案内

 田倉崎定点調査のご案内です。奮ってご参加ください。

 実施日:5月7日(日)
 調査地:和歌山市加太 田倉崎
 集合(指定電車):午前11時、南海加太線加太駅。難波09:10発特急サザンに乗り和歌山市駅加太線に乗り換えると加太駅10:49着。田倉崎まで徒歩約2.7km。
 干潮:13:46, -6cm
 解散:16時頃、現地で
 持ち物:観察・採集用具(ルーペ、野帳など)、弁当、飲み物、軍手、タオル。
 申込み:事前の申込みは不要です。
 参加対象:本会会員と同伴者
 その他:雨天中止。当日の朝、はっきりしないときは、午前7時以降に本会のブログで確認してください:https://osakawan.hatenablog.com
     体調不良の方は参加をご遠慮ください。

 定点調査についてはこちらをご覧ください。
 https://www.omnh.jp/iso/okk/page03.html

友ヶ島調査会は4月9日(日)に順延します

4月8日(土)に予定していた友ヶ島調査会ですが、海況不良で友ヶ島汽船の欠航が予想されるため、9日(日)に順延とします。詳細は申込み代表者の方にお送りしたメールをご参照ください。なお、9日の実施は確定ですので、前日の告知は行いません。

(石田)

大阪湾海岸生物研究会 2023年研究発表会・総会プログラム

2月23日(木祝)の大阪湾海岸生物研究会の研究発表会・総会のプログラムをご案内します。奮ってご参加ください。今回はハイブリッド形式になります。

■大阪湾海岸生物研究会研究発表会・総会
 日時:2月23日(木祝)13:00〜17:00
 会場:大阪市立自然史博物館 講堂 及び Zoom
 入場方法:会員の方は博物館南側の通用口からお入りください。通用口で守衛室に「大阪湾海岸生物研究会の総会出席」と告げて講堂へお進みください。
 その他:Zoomのアドレスは研究会のメーリングリストでお知らせしています。

【研究発表会】13:00〜15:45
「100年ぶりに発見されたコクテンシャコ」
 有山啓之・中島広喜(琉球大学)<リモート発表>

「田倉崎で見つかった奇妙な殻形態のキセワタ類」
 柏尾 翔 <リモート発表>

「大阪湾の磯で見かけるコケムシの話」
 大谷道夫

「淀川河口域に広分布する紅藻タニコケモドキBostrychia hamana-tokidae」
 山西良平・鍋島靖信

「城ヶ崎、長崎、西広海岸のタイドプールと潮下帯の映像」
 山下隆司

(休憩)

加計呂麻島のいざり」
 竹之内孝一

外来種ホンビノスガイとミドリイガイの個体識別による飼育試験結果」
 鍋島靖信

二枚貝類の資源動態と毒化が石げた網漁獲物に与える影響」
 安岡法子

「環境DNAで見た長崎海岸の魚類相」
 松井彰子

「2016〜2020年の定点調査のまとめと特徴的な出現種」
 石田 惣

【報告】16:00〜16:20
 魚類標本ボランティアの活動報告
 大山文庫整理ボランティアの再開について

【総会議事】16:20〜17:00

嵐の後の二枚貝

以前、嵐の後のウミウシについて書いたことがありましたが、今度は二枚貝です。

一昨日は暴風雪で、海も大荒れでした。そこで昨日の夕方、例のごとく箱作~淡輪の人工砂浜を散歩したところ、普段見ることのない二枚貝が打ち上げられていたので、報告します。

第1の種はフジナミガイです。ここでは初めて見つけました。何と、採集時には生きていました。砂干潟に深く潜る種類のようですが、このように打ち上ることもあるのですね。

フジナミガイ

(注)最初の投稿時にはムラサキガイと書きましたが、フジナミガイの誤同定でした。ご教示いただいた石田さんにお礼申し上げます。両種はよく似ているのですが、フジナミガイの方が殻高が高く、丸みが強いです。両種とも大阪府レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類(VU)となっています。osakafu-redlist2.xls

2番目はミドリイガイです。打ち上げられたブイにくっついており、軟体部が残っていました。外来の付着動物で、大阪湾では通常、冬は越せないとされてきましたが、今でもそうでしょうか。

ミドリイガイ

その他の二枚貝で、貝殻のみです。A:トリガイ、B:ウチムラサキガイ、C:カガミガイ、D:ヒメシラトリガイ、E:サクラガイ、F:マテガイです。嵐の後の海岸は狙い目です。(有山)

その他の二枚貝

 

箱作のハマダンゴムシ

ハマダンゴムシは大阪湾で長らく記録の無かったダンゴムシの仲間です。

実は私もそんな西宮市貝類館の渡部哲也さんに教えてもらうまではそんな貴重な生き物とは知りませんでした。

ハマダンゴムシのいた場所は箱作自然海岸満潮線付近の朽ちたビニールシートの下にまとまっていました。

大阪湾一斉調査のウェルカムリストにも掲載されているのでこれからも海岸に訪れた最探して見たいと思います。

(山下隆司)

 

田倉崎で発見されたホヤとカイメン

チラシボヤ Distaplia dubia

有山さんが採集されたホヤで、ヨレモクモドキの茎に巻き付いていました。

ホヤには単体性のものと群体性のものがありますが、この種は群体性で、拡大してみると共同外皮の中に星状に配列した個虫を確認できます(写真1の黄色っぽい小さな粒)。個虫を取り出してみると写真2のような構造をしていて、長い出水口舌状突起を持ち、胸部と腹部の間が強くくびれています。胃には見難いですが、弱い縦褶があります。また写真3にみるように鰓孔列は4列からなります。

この種は北海道から本州沿岸の浅所に広く分布するとされていますが、海岸生物研究会の記録も含め、大阪湾の記録はこれまでないと思いますので、初記録になると思います。

写真1 外観

写真2 個虫全体象

写真3 胸部解剖図

Lissodendoryx isodictyalis  和名なし

最初見たときはナミイソカイメンかと思いましたが、念のため持ち帰って骨片を見るとナミイソカイメンとは別物であることがわかりました。表面にはナミイソカイメンにはない小さないぼ状組織がたくさん見られます(写真1)。ナミイソカイメンは骨片が桿状体という両端が尖った棒状の骨片ただ一種なのですが、この標本には4種類の骨片が確認されました(写真2)。また、骨格構造も内層ではisodyctial構造と言って、骨片の先同士がくっつきあう構造を採っていて(写真3)、よく見かけるムラサキカイメンの骨格構造と似ています。また表層ははがれやすい薄い層になっています。

この種類は世界の海に広く分布するとされていますが、表面の凹凸の状態や色彩は文献によってずいぶん違っており、将来別種になるのかもしれません。

日本での分布はいまのところ文献上は瀬戸内海(向島、笹島、備後灘)となっていますが、筆者の記録では瀬戸内海以外では三浦半島があります。大阪湾ではもちろん初記録になります。

写真1 外観

写真2 骨片4種
写真3 骨格構造 左:表層平面図 右:内層縦断面図

以上 大谷