大阪湾海岸生物研究会のブログ

大阪湾海岸生物研究会の活動(定点調査や勉強会)の案内や記録のほか、大阪湾を中心とする海の生き物について書きます。

串本合宿でみつかった生物あれこれ

串本合宿でみつかったいくつかの種を紹介します。(大谷)

1.シロスジホシムシ Phascolosoma albolineatum

田並の潮間帯で岩の間から発見されました。白っぽい色彩の体表を透して表皮の内側を縦に走る筋肉の束を持っことがわかります。これはサメハダホシムシ属(Phascolosoma)の特徴のひとつです(写真1赤矢印)。さらにこの属のホシムシには陥入吻の前端付近に環状にならぶキチン質の鉤列があり、その列数や鉤の形状で種を見分けることができます。

この標本の鉤列は35列ほどあり(写真2(左))、個々の鉤は大きさは35μmくらいで先端が鉤軸の方向とほぼ直角をなす特徴を持っています(写真2(右))。

f:id:osakawan:20190815125811j:plain

写真1 外観
f:id:osakawan:20190815122908j:plain
f:id:osakawan:20190815122849j:plain
写真2 鉤列の一部(左)と鉤の形状(右)

2. ムラサキグミモドキ Afrocucumis africana
田並と田子両方の海岸でみつかりました。紫がかった小型のナマコで、同時にみつかったムラサキクルマナマコと色彩は似ていますが、こちらの方がずんぐりしています(写真1)。体表中にある骨片もムラサキクルマナマコとは違って、板状と棒状の2種類からなっています(写真2)。

f:id:osakawan:20190808153121j:plain

写真1 外観
f:id:osakawan:20190815134003j:plain
f:id:osakawan:20190815134010j:plain
写真2 骨片 板状体(左)と棒状体(右)

3. サザレボヤ Microcosmus curvus
田並でみつかりました。外観は写真(左)のように赤っぽく、質感は固い小型のホヤです。ホヤ類は外観では同定が難しいことが多く、このホヤも例外ではありません。まず解剖して内部構造を確認する必要があります。解剖してみると、背膜を持つことや左側生殖腺が腸環をまたいでいることなどからハルトボヤ属(Microcosmus)であることがわかりました。さらに右側生殖腺がC状にカーブしていることから(写真(右))本種と確認出来ました。種小名はこの右側生殖腺の形に由来するものと思われます。

f:id:osakawan:20190815145556j:plain
f:id:osakawan:20190815135241j:plain
写真 左:外観、右:内部構造




 

 

 








 

夏季合宿(今年こそ串本)のご案内

 今年の夏季合宿のご案内です。昨年、一昨年台風で断念した串本の磯で、今年こそはスノーケリングや磯観察を楽しみましょう。


■日程:8月2日(金)〜8月4日(日)
■場所:和歌山県西牟婁郡串本町西部
■参加対象:本会会員と同伴者

 

 詳しい実施要項や申し込み方法は、6月12日に大阪湾海岸生物研究会のメーリングリストでご案内しましたのでそちらをご覧ください。非会員の方で当会ならびに今回の合宿に関心のある方は、石田(iso@mus-nh.city.osaka.jp)までお問い合わせください。

城ヶ崎定点調査(6月16日)のご案内

 第4回の定点調査(城ヶ崎)を下記により実施します。皆様の参加をお待ちしております。

 実施日:6月16日(日)
 調査地:和歌山市深山、城ヶ崎
 集合:午前10時、南海加太線加太駅前。難波8:15発特急サザンに乗り、和歌山市駅加太線に乗り換え。加太駅9:47着。加太駅から現地まで徒歩約30分。
 干潮: 11時37分、22cm(和歌山港
 解散:午後3時ごろ、現地で
 持ち物:観察・採集用具(ルーペ、野帳など)、弁当、軍手、タオル。
 申込:事前の申込みは不要です。
 参加対象:本会会員と同伴者
 その他:雨天中止。当日の朝、はっきりしないときは、午前6時以降に本会のブログで確認してください。
https://osakawan.hatenablog.com


 定点調査についてはこちらをご覧ください。
 http://www.mus-nh.city.osaka.jp/iso/okk/page03.html

戎崎のオオミミズハゼ類

4月20日の戎崎定点調査で採集された霜降り模様のあるミミズハゼ類は、ほとんどの個体がオオミミズハゼLuciogobius grandisと同定されました。霜降りなのでシモフリミミズハゼL. sp. かもしれないと喜びましたが、ぬか喜びでした。オオミミズハゼの斑紋は個体差が大きく、斑紋が目立たない個体から水玉模様のような個体までいるようです(写真1)。

f:id:osakawan:20190422172006j:plain

f:id:osakawan:20190422170621j:plain

写真1 オオミミズハゼ。斑紋の目立たない個体(上)と目立つ個体(下)


オオミミズハゼとシモフリミミズハゼの識別点は、主に腹鰭基部の膜蓋の形状であり、オオミミズハゼでは窪むのに対し、シモフリミミズハゼではゆるやかに突出しているとされています(下記URL参照)。

https://www.fujimu100.jp/app/files/uploads/2019/04/Tokai-shizenshi12-05.pdf

 

ほとんどの個体の腹鰭の膜蓋は窪んでいたのですが、持ち帰った中で1個体のみ膜蓋が突出した個体がいました(写真2)。

f:id:osakawan:20190531090229j:plain
f:id:osakawan:20190524161233j:plain
写真2 腹鰭基部の膜蓋が窪んだ個体(左)と突出した個体(右)

 

ただし、この1個体は、膜蓋とその直前の皮膚との間に明瞭な溝があるなど、オオミミズハゼの特徴も同時に有しており、いずれの種であるのかは判断できませんでした。オオミミズハゼとシモフリミミズハゼは、本当に別種なのかという議論もあり、分類学的検討が必要です。(松井)

 

長崎のカイメン中のヨコエビ

5月18・19日に長崎海岸で採集したカイメン Mycale (Carmia) nullarosette 

https://marine-fauna.wixsite.com/porifera/mycale-carmia-sp-1

を調べたところ、サゼンヨコエビ Paranamixis aberro Hirayama, 1983 が多数出現しましたので、報告します。カイメン類の体内に生息する種としてはツツヨコエビColomastix が有名ですが(Ariyama, 2005)

http://www.mus-nh.city.osaka.jp/publication/bulletin/bulletin/59/59-001.pdf

本種も時々見られます。

 この種の最大の特徴ですが、オスとメスの形態が全く異なることです。オスの第2咬脚は巨大で独特の形状をしていますが、第1咬脚はありません。これに対し、メスの第2咬脚は小型で、鋏状の第1咬脚を持ちます。実は、クチナシヨコエビAnamixis とタンゲヨコエビParanamixis が含まれるクチナシヨコエビ科 Anamixidae のメスは別属 Leucothoides とされていたのですが、Thomas and Barnard (1983) により、オスが成熟脱皮をするとこのような形態に変化することが報告され、同種となりました。なお、クチナシヨコエビ科は、現在、マルハサミヨコエビ科 Leucothoidae に含められています。

 旧クチナシヨコエビ科は、本邦から以下の4種が報告されており、今回のものはオス第2咬脚の形態からサゼンヨコエビと同定されます。本種の属・種の和名は丹下左膳に因んでいると思いますが、オスの第1咬脚はないものの、目はちゃんと二つあります。

Anamixis sentan White and Reimer, 2012c(徳之島~石垣島

Paranamixis aberro Hirayama, 1983(長崎県志々伎湾)

P. misakiensis Thomas, 1997(三浦半島屋久島)

P. thomasi White and Reimer, 2012a(徳之島~西表島

 ヨコエビ類は小型のものが多く、徹底的に調べると数十種出現することから、定点調査での記録は現状のままでよいと思います(有山)。

f:id:osakawan:20190519183926j:plainサゼンヨコエビ オス(スケール:1 mm)

f:id:osakawan:20190519184547j:plain

サゼンヨコエビ メス(スケール:1mm)

長崎海岸のカイメンとホヤ類

カタカイメン  Leuconia dura

薄いカーキ色をした石灰海綿の一種です。さわった感じは固く、形は不定形です。表面は滑らかですがやや皺状になっています。骨片は矢車状のものが多く、これが体を支えますが、表層にはこのほかに微小な骨片が多数含まれています。詳しくは以下のサイトをご覧ください。

https://marine-fauna.wixsite.com/porifera/grantessa-mitsukurii-1

f:id:osakawan:20190518120129j:plain

 

マクワボヤ Cnemidocarpa clara

赤い色彩をした楕円形のホヤです。外皮には黄白色の多くの微小斑があります(写真1)。この種は以前、C. macrogastraと呼ばれていたことがありますが、この種小名は本種が大きな胃を持つことから来ているようです。その名の通り、この標本も胃が体の半分くらいを占めています(写真2 赤矢印)。生殖腺はくねくねと曲がったひも状のもので、写真ではわかりにくいですが体右側面に4本(写真2 黄矢印 3本しか示していませんが)、左側面に3本は確認できます。

f:id:osakawan:20190518132231j:plain

  写真1

f:id:osakawan:20190525174117j:plain

写真2                               (大谷)