大阪湾海岸生物研究会のブログ

大阪湾海岸生物研究会の活動(定点調査や勉強会)の案内や記録のほか、大阪湾を中心とする海の生き物について書きます。

ヒラタウミセミとハバヒロコツブムシ

皆様、明けましておめでとうございます。
 定点調査結果の小型甲殻類の部分をチェックしていたところ、2種の等脚類の混同が気になりました。両種とも潮間帯の転石裏側に生息する扁平で小判型の小型甲殻類です。以前撮影した写真を載せます。上はヒラタウミセミ(2013年田倉崎産)、下はハバヒロコツブムシ(2011年豊国崎産)です。最大体長はそれぞれ約5mm、3mmで、前者の方がやや大きいです。わかりやすい識別点は尾部で、ヒラタは小さめの腹尾節の後方に幅広い尾肢内肢が左右接して位置しているのに対し、ハバヒロでは腹尾節は大きな三角形となり、尾肢内肢は細長い三角形でその先端は腹尾節末端の横にあります。詳細な形態は下記の文献をご覧ください。両種とも小型でよく似ているため、現地での識別はかなり難しそうです。
Nishimura (1968) http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/175549
Nishimura (1976) http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/175916
 手元の標本を調べ直したところ、大阪湾南部沿岸ではハバヒロは汽水域を含めどこにでもおり、ヒラタは外洋的な場所(戎崎〜田倉崎)のみに生息しているようです。ちなみにNunomura and Nishimura (1976)では、ヒラタは友ヶ島北岸、神戸市垂水、岬町豊国崎、ハバヒロは岬町長崎・小池、和歌山市加太・田倉崎から採集されています。(有山)
Nunomura and Nishimura (1976) http://www.mus-nh.city.osaka.jp/publication/bulletin/bulletin/30/30-004.pdf