大阪湾海岸生物研究会のブログ

大阪湾海岸生物研究会の活動(定点調査や勉強会)の案内や記録のほか、大阪湾を中心とする海の生き物について書きます。

磯に出会いあり3 ヒバリガイモドキ Hormomya mutabilis

 今回の話題はヒバリガイモドキです。磯ではきわめて普通の二枚貝で、岩礁がこの貝で覆いつくされていることも珍しくありません。そんなにいっぱいいて食べ物に困らないのかというと困りません。食べ物は海中に漂う植物プランクトンだからです。実は二枚貝はいろいろな種類がありますが、その食べ物は非常にシンプルです。すべて珪藻などの植物プランクトンです。アサリもハマグリも牡蠣もムール貝もどれを食べてもおいしいのは同じ植物プランクトンを食べているからです。ヒバリガイモドキは食べたことはありませんが、きっとおいしいと思います。ときどき「牡蠣は森の恵みで育つ。森のミネラルが海に流れ込み、牡蠣を育てる。」といいますが、正確には肥料分が十分な海水中でさかんに光合成をして植物プランクトンが増えると、それを取り込んで牡蠣が育つということです。
 二枚貝は食性の関係上、水を体内に取り入れる仕組みがあります。その一番外側にあるのは入水管と出水管です。これは二枚貝の体を包む外套膜が癒合し、長く伸びたものです。アサリとヒメアサリではアサリのほうが入水管出水管が長く、識別点の1つとなっています。

 2016年の夏、とある磯のタイドプールにびっしりとヒバリガイモドキが並んでいるのを見つけました。少し殻を開いています。ここが貝の体を包む外套膜のヘリになります。よく見るとこの部分が2つに分かれ、大きいほうの開口部には細かいいぼ状の突起が並んでいることがわかります。外套膜が癒合して隙間が2つできているわけですが、(想像してください)いぼ状の突起を持つ方が管状になって伸びたり、狭い方から管状になって伸びればアサリなどにある入水管出水管になっていくと思いませんか。こんな様子は見たことがなかったのでここで紹介しようと思ったわけです。
 最後に、タイドプールという食べ物が来ることのない状態で、なんで口を開けているの?ということなのですが、それはその‥水を取り込むということは呼吸の役割も果たしているので、やっぱり必要なんじゃないかと思った次第です。