大阪湾海岸生物研究会のブログ

大阪湾海岸生物研究会の活動(定点調査や勉強会)の案内や記録のほか、大阪湾を中心とする海の生き物について書きます。

田倉崎追加種

田倉崎の追加をします。まだ同定途中ですが、同定が出来たものを報告します。
海綿動物
1.ムラサキカイメン(Haliclona (Reniera) cinerea
塔状に立ち上がる出水管はありませんが、はっきりとした出水孔が見られます。骨片は桿状体のみで、長さは110μm前後、幅は5μmのものが多くを占めます。骨格は骨片の先端がくっつきあった網目状構造です。外見がきれいな紫色をしていて表面が滑らかに見えたら、この種の可能性大です。出水管はない場合もあるようです。

2.Clathria (Axosuberites) sp.
オレンジ色をしたこのカイメンは今年の総会のときにご紹介しました。前に採集したのは豊国崎でしたが、田倉崎にも分布していました。このカイメンの周りの黒っぽいものは次に述べるフジイロカイメンです。

3.フジイロカイメン(Iotrochota baculifera
写真では黒っぽく見えますが、濃い紫色です。粘液質なカイメンで、つまむと糸を引くようにちぎれてしまいます。表面に近寄ってみると、ところどころに骨片束が飛び出していて、ちょっととげとげした印象です。
骨片のうち、主大骨片は棍棒状体と針状体で、微小骨片(赤矢印)は等爪状体です。大きさは、棍棒状体が200〜260μm、針状体が160μmくらい、微小骨片は11〜15μmくらいです。

脊索動物
Herdmania pallida
写真は用意できませんでしたが、ベニボヤ(Herdmania momus)によく似たホヤです。毎回出現していますが、現地ではベニボヤ属の1種として報告しました。ベニボヤは触ると柔らかいですが、この種はそれよりも硬さがあります。両種の区別点は、解剖しないとわかりませんが、生殖腺の構造にあります。ベニボヤでは輸卵管の先端にフリルのような構造がありますが、H. pallidaの輸卵管先端にはそのような構造はありません。輸精管はベニボヤが卵巣の上にたくさん開口するのに対して、輸卵管の近くに開くのみです。(大谷)