大阪湾海岸生物研究会のブログ

大阪湾海岸生物研究会の活動(定点調査や勉強会)の案内や記録のほか、大阪湾を中心とする海の生き物について書きます。

大阪湾のミル類

当研究会のデータベースhttp://www.mus-nh.city.osaka.jp/iso/okk/teiten_db/index.cgiによると、大阪湾の海岸から以下の3種が記録されています。
 ミル(Codium fragile)
 ハイミル(Codium lucasii)
 クロミル(Codium subtubulosum)
先日の田倉崎でもハイミルが記録されましたが、実は日本産ハイミルは2007年に以下の5種に分かれました(Shimada et al., 2007b)。
 ナンバンハイミル(C. arabicum)産地:沖縄、奄美、小笠原
 クビレハイミル(C. capitulatum)産地:高知、鹿児島
 オオハイミル(C. dimorphum)産地:高知、静岡、千葉、富山
 ハイミルモドキ(C. hubbsi)産地:鹿児島、福岡、和歌山、静岡、神奈川、千葉、青森、富山
 ハイミル(C. lucasii)産地:鹿児島、和歌山、小笠原
DNAだけでなく形態的にも違うそうですが、肉眼での識別は無理なようで、種の同定には顕微鏡での観察が必要となります。
 話は変わりますが、先日届いた南紀生物の最新号に「瀬戸内海で記録されたウスバミルとオオハイミル(アオサ藻綱,ハネモ目,ミル科)」(柴田,2014)という報告が載っていました。上記のハイミルの論文には瀬戸内海産の標本は検討されておらず、オオハイミルの記録は貴重なものです。しかし、私としては、ウスバミルの方が興味を引きました。というのも、1997年に Nature Study に「岬町の潮下帯で採集された珍しい海藻3種」を投稿したことがあり、それにはウスバミル(Codium tenuifolium)とよく似たヒラミル(Codium latum)が含まれているからです。拙文を再録します。

1. ヒラミル Codium latum Suringar
 採集日:1996年7月18日
 採集場所:岬町深日漁港東、距岸250m、魚礁上、水深6m
 大きさ;高さ28cm、幅48cm、厚さ0.7mm
暗緑色の布状の海藻で、短い基部で付着し、それから不定形に広がっています。体内には連結した胞嚢(高さ0.31mm、幅0.15mm)が充満しミル属だということがわかります。体形や胞嚢の大きさが岡村(1952)の記述とやや異なりますが、本邦には類似した種がいないため、本種に間違いないものと思われます。ヒラミルは1960年6月25日に淡路島洲本で、1980年8月21日に岬町小島でも採集されており(大阪市立自然史博物館、1988)、大阪湾では3番目の記録です。

外部や小嚢の形態から、私の報告した種はヒラミルではなく、2007年に高知〜千葉の標本を基に新種記載されたウスバミル(Shimada et al., 2007a)だと思います。南紀生物の報告によると、ヒラミルは藻体がより大型で、基部付近から葉部が二つ以上に分岐し、葉部の幅が狭く、小嚢は細長い円筒形だそうです。参考に、Nature Study に載った写真を添付します。(有山)