串本合宿でみつかったいくつかの種を紹介します。(大谷)
1.シロスジホシムシ Phascolosoma albolineatum
田並の潮間帯で岩の間から発見されました。白っぽい色彩の体表を透して表皮の内側を縦に走る筋肉の束を持っことがわかります。これはサメハダホシムシ属(Phascolosoma)の特徴のひとつです(写真1赤矢印)。さらにこの属のホシムシには陥入吻の前端付近に環状にならぶキチン質の鉤列があり、その列数や鉤の形状で種を見分けることができます。
この標本の鉤列は35列ほどあり(写真2(左))、個々の鉤は大きさは35μmくらいで先端が鉤軸の方向とほぼ直角をなす特徴を持っています(写真2(右))。
2. ムラサキグミモドキ Afrocucumis africana
田並と田子両方の海岸でみつかりました。紫がかった小型のナマコで、同時にみつかったムラサキクルマナマコと色彩は似ていますが、こちらの方がずんぐりしています(写真1)。体表中にある骨片もムラサキクルマナマコとは違って、板状と棒状の2種類からなっています(写真2)。
3. サザレボヤ Microcosmus curvus
田並でみつかりました。外観は写真(左)のように赤っぽく、質感は固い小型のホヤです。ホヤ類は外観では同定が難しいことが多く、このホヤも例外ではありません。まず解剖して内部構造を確認する必要があります。解剖してみると、背膜を持つことや左側生殖腺が腸環をまたいでいることなどからハルトボヤ属(Microcosmus)であることがわかりました。さらに右側生殖腺がC状にカーブしていることから(写真(右))本種と確認出来ました。種小名はこの右側生殖腺の形に由来するものと思われます。