大阪湾海岸生物研究会のブログ

大阪湾海岸生物研究会の活動(定点調査や勉強会)の案内や記録のほか、大阪湾を中心とする海の生き物について書きます。

講演会のお知らせ

東北大学の鈴木孝男さんをお招きして東北の干潟の現況に関する講演会を開催します。大阪市立自然史博物館で来る11月15日(土)〜16日(日)に「大阪自然史フェスティバル2014」が行われますが、その講演プログラムの一環として開催します。日時は16日(日)午前10時30分から正午です。

「大阪自然史フェスティバル」は地域の自然保護団体等が一堂に会して出展する文化祭で、だいたい毎年この時期に開催しています。この日は博物館の入館も無料となります。大人から子どもまで楽しめるブースがたくさん出ます。ぜひ奮ってご参加ください。

 ■大阪自然史フェスティバル2014
 http://www.omnh.net/npo/fes/2014/
 ※ホームページ上の情報はこれから随時更新されます。


■講演会「大震災が東北太平洋沿岸域に及ぼした影響とその後のベントスの回復状況」
 東北沿岸の干潟は、2011年の東日本大震災に伴う津波で激しく撹乱されました。干潟地形や底生生物(ベントス)の回復傾向、そして堤防や護岸壁といった復興工事による干潟の生物への影響について、現地でモニタリング調査を続ける東北大学大学院の鈴木孝男氏にお話し頂きます。

 日時:11月16日(日) 10:30から12:00
 会場:自然史博物館本館 講堂
 参加費:無料
 講師:鈴木孝男氏(東北大学大学院生命科学研究科)
 主催:大阪湾海岸生物研究会

 講演要旨:
 東北地方の太平洋沿岸域に立地する干潟群は、2011年の3.11大震災に伴う津波で激しく撹乱されました。津波はベントスのみならず、その生息基盤である干潟の砂や泥をも巻き上げ、遠方へ運び去りました。特に、南三陸沿岸部など、外洋に向かって広がっている湾内では津波の威力は強く、堤防は寸断されてひっくり返り、地盤沈下の影響も加わり、跡形もなくなった干潟が数多くあります。しかし、蒲生干潟などでは、破壊された砂洲は3ヵ月後には自然の力で回復しましたし、松島湾内の奥部にある干潟では津波による撹乱は弱く、干潟は元のままの形で残りました。このように、津波による撹乱影響は干潟ごとに異なっていました。津波直後には激減していたベントスは、2012年から回復してきており、2013年には、ほとんどの干潟で震災前よりも多くの種が確認されました。しかし、回復の程度や優占種は干潟ごとに異なっています。また、種数は回復してきているものの、生息数はまだ少なく、今後どのような回復過程をたどるのかをモニタリングしていく必要があります。
 一方、震災後に海水が入り、新たに干潟や塩性湿地になってしまったところが各地に見られました。こうした場所にはベントスが棲み込みはじめていましたが、そのほとんどは復興の過程でつぶされてしまいそうです。他にも堤防や護岸壁などの復興工事が干潟の生きものに与える影響が津波以上に大きくなりそうです。大震災で大きな影響を受けた干潟が、本来備えている機能を再び発揮できるようになるには、食物連鎖で中心的役割を担っているベントス群集が早くに戻ってくることが必須です。干潟も含めた沿岸域の自然環境が提供してくれる海の恵み(生態系サービス)を次世代が持続的に利用できるようにしていくために、今我々ができることを考えていかなければなりません。