大阪湾海岸生物研究会のブログ

大阪湾海岸生物研究会の活動(定点調査や勉強会)の案内や記録のほか、大阪湾を中心とする海の生き物について書きます。

城ケ崎のカイメン

今年の6月11日に城ケ崎で採集したカイメンの報告をします。次の1種です。

ツチイロカイメン(Dysidea fragilis
 全体に突起がありトゲトゲした感じのカイメンです。ただ、この突起は触っても刺さるようなことはありません。水分を含んでいる間は弾力がありますが、乾燥するともろくなり、壊れ易くなります。色彩はカーキ色と言ったところでしょうか。大きさは、縦×横×厚みがそれぞれ2.5cm×3.0cm×1.0cmです(写真1、2)。骨片を観察したところ、骨片はまったくなく、海綿質繊維がカイメンの構造を支えています(写真3、4)。骨片を持たないこのようなタイプのカイメンは、以前は角質海綿目というひとつの「目」にまとめられていましたが、今は網角質海綿目と樹状角質海綿目という二つの「目」に分けられています。本種は前者の網角質海綿目に属します。
 構造の特徴を簡単に述べると次のようになります。海綿質繊維は基底から表層にかけて垂直に走る一次繊維と、一次繊維を結びそれと直交するか枝分かれしながら走る二次繊維があります(写真3,4)。どちらの繊維も別の種類のカイメンの骨片や砂粒を大量に含んでいます。ただ、その量は一次繊維の方が二次繊維より大分多くなっています。繊維と繊維の間にも他のカイメン骨片や砂粒などの異物を含んでいます。
 本種の記録はいまのところ相模湾だけです。大阪湾では初記録となります。(大谷)