5月18・19日に長崎海岸で採集したカイメン Mycale (Carmia) nullarosette
https://marine-fauna.wixsite.com/porifera/mycale-carmia-sp-1
を調べたところ、サゼンヨコエビ Paranamixis aberro Hirayama, 1983 が多数出現しましたので、報告します。カイメン類の体内に生息する種としてはツツヨコエビ属 Colomastix が有名ですが(Ariyama, 2005)
http://www.mus-nh.city.osaka.jp/publication/bulletin/bulletin/59/59-001.pdf
本種も時々見られます。
この種の最大の特徴ですが、オスとメスの形態が全く異なることです。オスの第2咬脚は巨大で独特の形状をしていますが、第1咬脚はありません。これに対し、メスの第2咬脚は小型で、鋏状の第1咬脚を持ちます。実は、クチナシヨコエビ属 Anamixis とタンゲヨコエビ属 Paranamixis が含まれるクチナシヨコエビ科 Anamixidae のメスは別属 Leucothoides とされていたのですが、Thomas and Barnard (1983) により、オスが成熟脱皮をするとこのような形態に変化することが報告され、同種となりました。なお、クチナシヨコエビ科は、現在、マルハサミヨコエビ科 Leucothoidae に含められています。
旧クチナシヨコエビ科は、本邦から以下の4種が報告されており、今回のものはオス第2咬脚の形態からサゼンヨコエビと同定されます。本種の属・種の和名は丹下左膳に因んでいると思いますが、オスの第1咬脚はないものの、目はちゃんと二つあります。
Anamixis sentan White and Reimer, 2012c(徳之島~石垣島)
Paranamixis aberro Hirayama, 1983(長崎県志々伎湾)
P. misakiensis Thomas, 1997(三浦半島、屋久島)
P. thomasi White and Reimer, 2012a(徳之島~西表島)
ヨコエビ類は小型のものが多く、徹底的に調べると数十種出現することから、定点調査での記録は現状のままでよいと思います(有山)。
サゼンヨコエビ オス(スケール:1 mm)
サゼンヨコエビ メス(スケール:1mm)