1.ヤマトボスメールカイメン Vosmaeropsis japonica
全身から桿状体骨片が突き出し、トゲトゲした印象の小さな石灰海綿です。今月の18日に紹介した同じ石灰海綿のミサキケツボカイメンも桿状体が突出しますが、その突出の仕方は束状なため、単独で突出する本種とは違っています。さらに両種の大きな違いは溝系の構造で、ミサキケツボカイメンがサイコン型で壺状の溝系を持つのに対し、本種はロイコン型という複雑な構造を持っています。
また、同じく潮間帯に住み、溝系も同じロイコン型で桿状体が突出する種にアブラツボロイカンという種がありますが、本種が偽矢状骨片(写真参照)や表面から突き出る線状の細い桿状体を持つのに対し、アブラツボロイカンにはそれらがないことで区別できます。なお、詳しくは「磯で見かけるカイメンの図鑑」の記事(以下をクリック)をご参照ください。
https://marine-fauna.wixsite.com/porifera/vosmaeropsis-japanica
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2.タイラカイメン属(タイラカイメン亜属) Hymedesmia (Hymedesmia) sp.
きれいなオレンジ色をしたカイメンです。厚さは0.2~0.4mmほどで、薄く岩の表面を被っています。このカイメンの特徴は、複数種類の大型の骨片と微小骨片が存在すること、骨格構造にHymedesmoid構造と呼ばれる、骨片が単体で基底から垂直に立ち上がる構造が見られることなどです。骨片は有棘針状体、亜鈴状体に似ていますが、軸に環状の膨らみがあるPolytyloteという骨片、等爪状体の三種です。特に等爪状体の存在はこの標本が本亜属であることを示しています。
この亜属のカイメンは国内から2種が記録されていますが、長崎海岸の標本は、骨片の配列や等爪状態の密度、Polytyloteの存在などの特徴がそのいずれとも合致しません。
骨片の種類や大きさがよく似たものにヨーロッパに分布するH. (H.) cohesibacillaという種がありますが、色彩やカイメン表面の篩板の有無、等爪状体の密度などに違いがあっていまのところ該当種がありません。
長崎海岸では2014年5月にも採集されていますが、そのときは報告していないようですので、いま報告します。(以上 大谷)
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