大阪湾海岸生物研究会のブログ

大阪湾海岸生物研究会の活動(定点調査や勉強会)の案内や記録のほか、大阪湾を中心とする海の生き物について書きます。

長崎海岸追加種の紹介

先日okkメールで報告しましたが、コケムシMicroporella sp.とカイメンのHymedesmia sp.がどんな生き物であるか写真で紹介します。写真がなかなかアップロードできなくて記事が遅れました。石田さんのアドバイスでなんとかアップロードできました。ありがとうございます。

[外肛動物(コケムシ)]
Microporella sp.
この属のコケムシは種類も多く、形態的な差異も少ないためその同定は大変難しいとされています。正確な同定には電子顕微鏡が必要とされることもあって、ここでは属までの同定にとどめておきます。
この属の特徴の一つとして、半円形の虫室孔や調整嚢孔、長い顎を持った鳥頭体の存在などがあります(写真参照)。

[海綿動物]
Hymedesmia (Hymedesmia) sp.(ウスイタカイメン属)
オレンジ色で表面がツルツルしたカイメンで、はじめ見たときはホヤの一種Didemnum flagellatumかと思いました。でも、持ち帰って顕微鏡で見たら骨片が見えましたのでカイメンとわかりました。外見上は、カイメン類によく見られる出水管も出水孔も全く見られません。
厚さは0.4mmくらいで非常に薄いカイメンです(写真1、2)。

骨片は主大骨片が亜鈴状体と大小2種の有棘針状体で3種、微小骨片が等爪状体1種で合わせて4種からなります(写真3、4、5)。これら複数種の骨片の存在はこのカイメンが多骨海綿目であることを示します。さらに、外層の骨片が接線方向に並ぶこと(写真6)、内層の基底部にある有棘針状体が垂直に立ち上がること(写真7)などの骨格構造の特徴は、このカイメンがウスイタカイメン科のウスイタカイメン属のものであることを示しています。この属には二つの亜属がありますが、等爪状体を持つことで亜属Hymedesmiaに分類されます。この亜属のカイメンは世界の海から非常に多くの種が知られていて、同定が難しいグループのひとつのようです。日本からは5種ほどが知られていますが、瀬戸内海からはH. uchinourensisと言う種1種が知られるのみです。残念ですが、大阪湾の標本はこのH. uchinourensisとは骨片の種類やサイズ、骨格構造が一致しません。他の4種の中にも一致するものはありません。同定にはしばらく時間がかかりそうな難しい種類のようです。(大谷)