大阪湾海岸生物研究会のブログ

大阪湾海岸生物研究会の活動(定点調査や勉強会)の案内や記録のほか、大阪湾を中心とする海の生き物について書きます。

モクズガニの話題

有山さんから10日ほど前にモクズガニのご紹介をいただきました。このモクズガニに関することですが、海外にもこの仲間はいて、それらが日本へ侵入することが心配されています。環境省はこの仲間を「外国産モクズガニ属」として特定外来生物に指定していますが、まだ日本国内での定着が確認されていないこともあって「定着予防外来種」に含め、その侵入動向に注意を呼び掛けています。モクズガニ属(Eriocheir)の中で最も気になるのは、中国から日本国内へ輸入され、また養殖もされていると言われるチュウゴクモクズガニEriocheir sinensis)でしょう。このカニは2004年に生きた雌個体と死んだ雌個体がそれぞれ1個体東京湾のお台場で発見されたことがありますが(Takeda and Koizumi 2005)、発見はそのときだけで、幸いなことにその後の記録はありません。
専門家が見れば日本のモクズガニと間違えることはないかもしれませんが、よく似ていますので、侵入したとしても案外見過ごされていることもあるかも知れません。それで注意をしていただこうと思い、たまたま昨年秋に中国の蘇州へ旅行した際手に入れて持ち帰ったチュウゴクモクズガニの標本がありますので、甲羅だけですが写真で紹介します。この標本のサイズはCW65mm、CL60mmです。日本のモクズガニとの大きな違いは、前側縁に4歯を持つこと。その歯が大きく突き出して尖っていること。また額に尖った4歯を持つことなどです。
もし、今度モクズガニをみつけることがあったら、それがチュウゴクモクズの可能性はないか注意してみてください。(大谷)

Takeda, M. and M. Koizumi (2005) Occurrence of the Chinese mitten crab, Erioeheir sinensis Edwards, in Tokyo Bay, Japan. Bull, Natn. Sci. Mus. Tokyo, Ser. A, 31(1): pp. 21-24.