オーストラリアハルトボヤ Microcosmus squamigera
有山さんに提供していただいたホヤです。大きさは体長3.1cmでした(写真:外観)。現地では種類がよくわからなかったので持ち帰って解剖したところ、大きな生殖腺が体の両側にあって、特に左側(写真:解剖写真の右側の部分)の生殖腺が第一腸環から始まって腸をまたいで第二腸環へ抜けるというMicrocosmus属のホヤの特徴を持つことがわかりました(写真:解剖写真)。
これ以外の特徴として、鰓嚢の襞が体の左右にそれぞれ9つあること、繊毛孔がぐるりと二重に巻くこと(写真:繊毛孔)、内柱にボタン状の小さな突起があること、水管の内壁にある微棘の高さが18~25 µm、幅が13~18 µmあって、平面的に見た形が屋根瓦のようになっていること(写真:水管の微棘)、生殖腺がいくつかの塊に分れていることなどがありました。
日本産のMicrocosmus属には、ハルトボヤ(M. hartmeyeri)、ヒメハルトボヤ(M. multitentaculata)、サザレボヤ(M. curvus)の3種が知られていますが、本種がこれらと異なる点は、鰓嚢の襞の数がこれらの種よりも多いこと、生殖腺が複数の塊に分かれること、とりわけ水管内壁の微棘が屋根瓦のような形をして、高さが他の種が100 µmを超えるのに比べて25 µm以下と小さいことなどです。
このホヤは原産地がオーストラリアとされていますが、原産地以外では1981年にイタリアとチュニジアで見つかったのを皮切りに、地中海一帯、北西大西洋沿岸各地、北米カリフォルニア、メキシコ、西アフリカ、南アフリカなど温帯域の広い範囲で発見され、これらの地域に侵入した外来種と考えられています。アジアでは昨年韓国の済州島で見つかりました。日本ではどうかというと、2007年に神奈川県の真鶴で見つかって以来、房総半島、三浦半島、駿河湾、串本、紀伊半島、松山沖(航路ブイ上)、沖縄などから見つかっていますが、大阪湾からの記録はありませんでした。今回が大阪湾初記録となります。
また、この種は集団で付着することがあるとされていて、そのような場合、カキ養殖場などで被害を起こす例も海外では知られていますので、今後の動向が気になるところです。
(大谷)