大阪湾海岸生物研究会のブログ

大阪湾海岸生物研究会の活動(定点調査や勉強会)の案内や記録のほか、大阪湾を中心とする海の生き物について書きます。

田倉崎の現況

先日の総会で話が出た田倉崎の状況を見に行ってきました。淡島神社の先、シ-サイドホテル外側の護岸が100m×2ヵ所崩れており、復旧工事中で(写真1)、9月まで自動車の通行はできないそうです。ただ、工事現場も徒歩の通行は可能で、重機に気を付けて山側を歩いてくださいと言われました。その先、研究会の定点までは、一部崩壊していましたが(写真2)、特に問題ありません。

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写真1、工事現場

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写真2、定点手前の崩壊箇所

 

話は変わりますが、田倉崎には灯台があるのですね(写真3)。何と1956年にできたそうです。登り口の階段のすぐ横には歌碑がありました(写真4)。最近できたものですかね、記憶にありません。

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写真3、田倉崎燈台

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写真4、歌碑

 

[おまけ]岬町長崎海岸の公衆便所の写真も撮影してきました。使用禁止です。やはり、台風21号はすごかったですね。(有山)

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写真5、長崎の公衆便所

 

大阪湾海岸生物研究会 2019年研究発表会・総会プログラム

2月24日(日)の大阪湾海岸生物研究会の研究発表会・総会のプログラムをご案内します。奮ってご参加ください。なお、たくさんの方にご発表頂けることになりましたので、開始時間を当初予定より30分早め、午後1時ちょうどからとしました。ご注意ください。

 入場方法:
 博物館南側の通用口からお入りください。通用口で守衛室に「大阪湾海岸生物研究会の総会出席」と告げて集会室へお進みください。

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大阪湾海岸生物研究会 2019年研究発表会・総会プログラム
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日時:2月24日(日) 午後1時〜午後5時30分
会場:大阪市立自然史博物館 集会室

【研究発表会】13:00 - 16:45
「本邦産シャクトリドロノミ科ヨコエビについて」有山啓之
タイランド湾パタヤ沖の八放サンゴ調査」今原幸光*・Suchana C.・Voranop V.・藤田敏彦
「ツツミサンゴ科 意外と見つかりました」近江智行
「大阪湾沿岸で捕まえた生き物を飼育すること6カ月で気づいた事」岡 漕人・岡 美保
「串本の漂着物」渡邊淳一
熊本県唐人川のスミノエガキ」石井久
「大阪湾の干潟域におけるウミウシ類の多様性と保全について」柏尾 翔
「大阪湾のレッドリスト生物」山西良平
田辺湾の磯20年―クラスター分析から―」竹之内孝一
環境省モニタリングサイト1000磯調査・大阪湾サイトでの10年間を眺める」石田 惣

【報告】16:50-17:00
・大山文庫の整理進捗状況(石田)

【総会議事】17:00 - 17:30

※終了後、鶴ヶ丘近辺で懇親会を開催します(当日受付、会費4000円程度)。また、当日、年度会費(1500円)を集めます。

書籍紹介「ネイチャーウォッチングガイドブック日本の貝」

 貝類の図鑑はこれまでにいろいろ出版されてきましたが、全体として専門家向けの図鑑が多かったように思います。本書は、日本の本州中部以南温帯域の潮間帯からダイビングで潜水可能な水深帯で比較的見つけやすい貝類を中心に選定し、その生態写真と殻を図示したものです。標本はその種の特徴を示す典型的なものを選び、付着物等を取り除くなどの処理が丁寧に施されており、複数方向から撮影した写真が掲載されています。生態写真だけの図鑑もありますが、同定には適していません。ほぼすべての種について生態写真と殻標本を併せた図鑑はこれまでにはなく、画期的で斬新な内容といえます。水中観察や写真撮影をするダイバーにも必携で、重宝される一冊でしょう。

 貝類は動きの鈍い動物ですが、生態の撮影はうまく方向やタイミングが合わせる必要があり、案外難しいものです。しかも水中で撮影となると、限られた時間内で粘り強く待ちながら見つけ出し、納得の一枚を撮ることは骨が折れる作業です。このような図鑑を刊行されたことに敬意を表します。学術的にも活用でき、一般にも親しみやすく、フィールドに持っていくにも便利な一冊です。多くの方々が本書を手に取り、貝に関心を持っていただければ幸いです。(大古場)

 

www.seibundo-shinkosha.net

 

打ち上げホンダワラ

 先日、ワカメを拾いにせんなん里海公園周辺を散歩しました。ワカメは冬の時化の後はよく打ちあがっており、私にとっては買うものでなく拾うものです。この日は残念ながらワカメはほとんど無かったのですが、ホンダワラ類が多く打ちあがっていました。調べたところ、5種が確認されたので、紹介します。

1. ヨレモクモドキ Sargassum yamamotoi

 最も多かったのがこの種です。他種と比べて大振りで、気泡は楕円体で冠葉があり、葉には鋸歯を備えます。ノコギリモク S. macrocarpum、トゲモク S. micracanthum やヨレモク S. siliquastrum と似ますが、本種は主枝が扁平で数cmごとに屈曲するので、区別できます。ヨレモクモドキは以前は大阪湾に生育していなかったのですが、1997年以降自生が確認され、分布を拡げています。 

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2. シダモク S. filicinum

 本種は、気胞が紡錘形で先端に葉と似た冠葉を付けるのが特徴です。葉は薄く、深い切れ込みがあります。

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3. アカモク S. horneri

 前種シダモクとよく似ていますが、葉の幅がやや狭く、気胞が円柱状である点が異なっています。

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4. タマハハキモク S. muticum

 丸い気泡を持つのが最大の特徴です。マメタワラ S. piluliferum もこのような気泡を持ちますが、葉がくさび形~長楕円形の本種に対し、糸状である点が異なっています。

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5. ホンダワラ S. fulvellum

 ホンダワラという名前のホンダワラ類ですが、大阪湾では稀で、水深3m以深のやや深場に生育します。本種の気泡も丸いですが、写真のように短い糸状の冠葉を持つこともあります。葉は薄く楕円形~披針形で、周囲に鋸歯を持ちます。

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 ホンダワラ類はよく似た種が多く、しかも生長段階で形が大きく変化するため、同定が難しいことがありますが、日頃から丁寧に観察し経験を積めば、区別できるようになります。(有山)

シンポジウム開催のお知らせ

シンポジウム「はぜ!ハゼ!鯊!〜ハゼの多様性と生態の魅力に迫る〜」を下記のとおり開催いたします。

■「はぜ!ハゼ!鯊!〜ハゼの多様性と生態の魅力に迫る〜」

 ハゼ類は沿岸域に生息する小さな魚です。自然に親しむ方なら、誰もが一度は目にしたことがあるかと思いますが、この小さな魚の魅力はあまり知られていません。ハゼ類は沿岸域で爆発的な種分化を遂げ、脊椎動物の中で最大級の種数を誇る分類群です。その生息環境や生活史は実に多様で、甲殻類と共生するなどユニークな生態を持つものもいます。今回、ハゼの生態に関する研究者5名に話題提供していただき、ハゼの生態とその多様性、そこから見えてくる生物相の形成史や人間社会と自然のかかわりなどに迫ります。

・日時:2019年1月20日(日)13:00〜16:15
・場所:大阪市立自然史博物館 講堂
・対象:どなたでも
・参加費:無料(ただし博物館入館料が必要。大阪湾海岸生物研究会の方は博物館通用口からお入りください。その他の方は、博物館正面入口からお入りください。)
・申込み:不要(直接会場へお越しください)
・主催:大阪湾海岸生物研究会・大阪市立自然史博物館

・演題:
〇多様で柔軟、ヨシノボリのくらし
平嶋健太郎氏(和歌山県立自然博物館)

〇多様な生活史を送るハゼの魅力〜沖縄の水辺から〜
國島大河氏(和歌山県立自然博物館)

〇汽水域に生息するハゼ類の保全生態学的研究
乾 隆帝氏(山口大学

〇他の生物と共に生きるハゼ〜無脊椎動物の巣穴利用〜
邉見由美氏(京都大学

〇沿岸生物の地域集団とその形成史〜ハゼ類の生態的多様性をヒントに〜
松井彰子(大阪市立自然史博物館

・問い合わせ:
松井 彰子
大阪市立自然史博物館
〒546-0034 大阪市東住吉区長居公園1-23
tel: 06-6697-6221
e-mail: shom(at)mus-nh.city.osaka.jp (atを@に変えてお送りください)

磯に出会いあり4   ベニタケ Terebra dimidiata
 秋になると海岸生物の活動は少なくなり、このブログもすっかり静かになります。磯乞食とも呼ばれる海岸を跳梁する者たちがいなくなるからです。なぜか?その理由は明白です。「秋は潮が悪い」のです。
 大潮の時、一日2回の干潮があるのは年中同じですが、1日2回の干潮時の潮の“高さ”は同じではありません。大阪湾やその南の太平洋に面した海岸は春から夏にかけて大潮の最干潮は昼頃に来ます。しかもよく引きます。だから大阪湾海岸生物研究会の活動日は春から夏に日程を組むのです。冬が近づくとこの最干潮が深夜にくるようになります。そして実は最もよく引く大潮の最干潮は春や夏ではなく真冬の真夜中なのです。と、ここまでが前振りです。ネット時代の今日、「気象庁 潮位表」で検索すれば、日本全国近未来の潮位がどうなるのか親切にも表になって示してあります。ちなみに今年はクリスマスの頃とってもよくひくことがわかっています。

 写真は巻貝のタケノコガイ科に属するベニタケの生体写真です。ベニタケは夜行性ですから昼間は這っている写真を撮ることはできません。といって、この写真は夜の海に潜って撮ったものでもありません。長い前振りからお分かりのように、この写真は深夜大潮の最干潮時に撮ったものです。この場所を案内してくれたA氏は「ベニタケなんか腐るほどいる」と言ってくれたのですが、深夜潮が引くのを待ってその場所を訪れると、ジュドウマクラやミガキタケなどが砂の上に姿を現し、あちこちで這っていたのでした。もちろんベニタケも!!
 A氏との約束でその場所を明かすことはできませんが、時間を選んでその場所を訪れれば必ずベニタケに会える場所がこの日本の中にあるということは素晴らしいと私は思うんです。

磯に出会いあり3 ヒバリガイモドキ Hormomya mutabilis

 今回の話題はヒバリガイモドキです。磯ではきわめて普通の二枚貝で、岩礁がこの貝で覆いつくされていることも珍しくありません。そんなにいっぱいいて食べ物に困らないのかというと困りません。食べ物は海中に漂う植物プランクトンだからです。実は二枚貝はいろいろな種類がありますが、その食べ物は非常にシンプルです。すべて珪藻などの植物プランクトンです。アサリもハマグリも牡蠣もムール貝もどれを食べてもおいしいのは同じ植物プランクトンを食べているからです。ヒバリガイモドキは食べたことはありませんが、きっとおいしいと思います。ときどき「牡蠣は森の恵みで育つ。森のミネラルが海に流れ込み、牡蠣を育てる。」といいますが、正確には肥料分が十分な海水中でさかんに光合成をして植物プランクトンが増えると、それを取り込んで牡蠣が育つということです。
 二枚貝は食性の関係上、水を体内に取り入れる仕組みがあります。その一番外側にあるのは入水管と出水管です。これは二枚貝の体を包む外套膜が癒合し、長く伸びたものです。アサリとヒメアサリではアサリのほうが入水管出水管が長く、識別点の1つとなっています。

 2016年の夏、とある磯のタイドプールにびっしりとヒバリガイモドキが並んでいるのを見つけました。少し殻を開いています。ここが貝の体を包む外套膜のヘリになります。よく見るとこの部分が2つに分かれ、大きいほうの開口部には細かいいぼ状の突起が並んでいることがわかります。外套膜が癒合して隙間が2つできているわけですが、(想像してください)いぼ状の突起を持つ方が管状になって伸びたり、狭い方から管状になって伸びればアサリなどにある入水管出水管になっていくと思いませんか。こんな様子は見たことがなかったのでここで紹介しようと思ったわけです。
 最後に、タイドプールという食べ物が来ることのない状態で、なんで口を開けているの?ということなのですが、それはその‥水を取り込むということは呼吸の役割も果たしているので、やっぱり必要なんじゃないかと思った次第です。